駅の案内板や道路標識、商業施設のデジタルサイネージなど、街中には数多くのサインが存在します。しかし、意図して設置した情報が「実は利用者にうまく届いていない」ケースも少なくありません。特に、高齢者や外国人観光客、障がいのある方にとって、情報の欠如は「移動の自由」を阻害する大きな壁となります。
サイン計画やユニバーサルデザインの評価には、アンケートやヒアリングがよく用いられます。しかし、自分自身の視線を後から正確に思い出すことは難しく、主観的な調査だけでは限界があります。
そこで役立つのが、「どこを最初に見ているか」「どこで視線がさまよっているか」を数値化するアイトラッキング(視線計測)技術です。この技術の導入により、感性や経験則に頼らず、科学的なエビデンスに基づいた都市計画やサイン設計が可能になります。
アイトラッカーを活用すれば、利用者が空間を歩きながら「何を」「どの順番で」「どれくらいの時間見ているか」を正確に記録できます。具体的には、以下3つの要素を可視化します。
大規模な公共施設や空港において、利用者が目的地にたどり着くまでのプロセスは「ウェイファインディング」と呼ばれます。しかし、案内サインが多すぎると、逆に利用者を混乱させる「情報のオーバーロード」を引き起こしかねません。
もしアイトラッカーの計測で、特定の交差点で視線が激しく動く様子が確認できれば、その人が「迷っている」証拠です。原因として、案内の不足や、既存の看板が視界に入りにくい位置にあるといった問題が浮き彫りになります。
データに基づく解析から、視線が自然に集まる「アイレベル」への看板の再配置、床面サインを用いた足元からの誘導など、具体的な改善策を導き出せます。
アイトラッキング技術は、ユニバーサルデザインの検証にもピッタリです。車椅子利用者や高齢者、外国人観光客など、属性ごとに異なる視界を共有し、より適切な情報の提示方法を検討できます。
広告や街路樹、植栽など、都市空間には多くの視覚情報が混在しています。アイトラッカーには、よく見られている場所を赤く表示するヒートマップ機能が搭載されており、これを活用し、周囲の景観に紛れて「無視されているサイン」を容易に把握することが可能です。
例えば、避難誘導灯などの重要なサインが、派手なデジタルサイネージの光に負けて認識されないケースが考えられます。こうした課題に対して、視線の捕捉率を比較しながらサイネージの輝度を調整する、誘導灯の周囲に余白を設けて目立たせるなど、環境全体における視覚情報の整理を進められます。
都市計画やサインの評価では「据え置き型」ではなく、実際に空間を歩きながら計測できる「ウェアラブル型(メガネ型)」のアイトラッカーを選定します。長時間の歩行調査でも負担にならないよう、50g前後の一般的なメガネに近い軽量モデルが理想的です。
さらに、フレームが厚いと被験者の周辺視野を遮り、本来見えるはずのサインが隠れてしまう「装置による死角」が生じます。そのため、可能な限りレンズ周辺が開放的なデザインを選ぶことが重要です。
公共インフラの調査対象は、日差しの強い屋外停留所から薄暗い地下通路まで多岐にわたります。太陽光に含まれる赤外線はアイトラッキングの精度を下げる原因となるため、「屋外対応」の製品や「露光調整機能」に優れた機材が不可欠です。
加えて、歩行の振動や階段の昇降で視線位置がずれると、正確なデータが取得できません。頭部を動かしても高い精度を維持できる「スリップ補正機能」の有無も忘れずに確認してください。
都市空間の調査では、1人あたり数十分もの歩行データが生成されます。これを手作業で分析し、特定の看板を見た時間を集計するのは非現実的です。
そこで役立つのがオブジェクト検知機能。映像内の看板やピクトグラムをAIが自動認識し、視線が重なった時間を一括で集計してくれます。加えてマッピング機能を用いれば、複数人の視線データを設計図やパースなどの静止画上に重ね合わせ、視線の集中エリアを一目で把握することが可能。
膨大なデータを効率的に処理するためにも、こうした高度な解析ソフトを備えた製品の導入をおすすめします。
本記事では、都市計画・サイン・ユニバーサルデザインにおけるアイトラッカーの活用方法を解説しました。看板やサインを設置する際、「ここにあれば便利だろう」という単なる仮説で終わらせず、客観的なデータを用いて「ここなら確実に視線が止まる」という確信に変えることが大切です。そのプロセスが、より安全で誰にでも優しい都市空間の構築へと繋がります。
ここでは、アイトラッカーの導入を検討している方向けに技術者による導入サポートとデモの開催や対応をしているアイトラッカーを目的別にご紹介しています。目的と用途に合わせて装置をピックアップしていますので、ぜひ製品選びの参考にしてください。
運転時や現場点検の
視線行動を計測したい


| レンタル可否 | 〇 ※1週間単位 |
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| レンタル可否 | 〇 要問合せ |
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| レンタル可否 | 〇 ※月単位 |
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※2023年8月1日調査 googleで「アイトラッカー」で検索して表示された、アイトラッカー取り扱い企業の上位17社の中から、技術者による導入サポートとデモの開催または対応を行っている企業をピックアップし、以下の特徴で選出。
現場の複数箇所の視点を計測したい…唯一、導入企業の現場に合わせたカスタマイズ性と持つ装着型アイトラッカーを提供
対象物1点の細かい視線を追跡したい…唯一、視線データの取得量が一番高く(1200Hz)、マイクロサッカードを含む無意識な眼球運動を計測できる据え置き型アイトラッカーを提供
VRで再現された空間の評価をしたい…唯一、空間体験をしながら計測が可能なヘッドマウント型ディスプレイの装着型アイトラッカーを提供