医療・福祉

目次

超高齢社会において、医療・福祉分野の技術革新は喫緊の課題です。アイトラッキング技術は、現場の負担軽減から診断の精度向上、さらには患者のQOL(生活の質)改善に至るまで、多様な課題解決に貢献しています。ここでは、具体的な活用シーンとそのメリットについて解説します。

医療におけるアイトラッカー活用で分かること

医療従事者の視点を可視化

アイトラッカーは、看護・医療現場における動線調査や作業記録に導入されています。例えば、処置中の視線を記録して「どこに注意を向け、何を確認しているか」を可視化することで、熟練者の判断基準を教育資料として活用できます。

また、ヒヤリハット対策として「薬の取り違え防止」にも役立てられています。薬剤棚のレイアウト検討や、誤認を防ぐラベルデザインの評価に視線データを用いることで、より安全な医療環境の構築が可能になります。

アイトラッカーで解決できる医療現場の課題

熟練の技術と「コツ」の伝承

アイトラッカーを用いて熟練の医師や看護師の視点を計測すると、手術中の微細な注視点の移動や、モニター情報の優先順位などが明確になります。暗黙知となっていた高度なスキルをデータ化することで、新人教育の効率化と、医療の質を底上げするスムーズな技術伝承を実現します。

神経疾患の早期検知と客観的な診断サポート

アルツハイマー病やパーキンソン病、外傷性脳損傷などは、特定の眼球運動に予兆が現れることが知られています。これらの微細な動きをアイトラッカーで追跡することで、病気の早期発見や治療効果の判定に役立てることが期待されています。

この手法は患者にとって身体的負担が少ない(非侵襲)だけでなく、医師の主観や経験に依存しすぎない、客観的で再現性の高い診断のサポートにもつながります。

脳震盪の診断に活用

スポーツ現場における脳震盪(頭部外傷)の判定にも、アイトラッキング技術が注目されています。脳震盪は画像診断では確認が難しく、従来は選手の自己申告に頼る部分が大きいのが課題でした。

ポータブルなアイトラッカーで眼球運動の円滑さを数値化することで、脳震盪の有無や試合復帰の可否を客観的に判断できるようになり、選手の安全を守る重要な指標となります。

福祉におけるアイトラッカー活用で分かること

歩行分析を通じた転倒・つまづきの防止

福祉現場では、高齢者の転倒予防にアイトラッカーが活用されています。高齢者の歩行時の視線を計測することで、無意識に見落としている段差や、注意が散漫になりやすい箇所を特定し、住環境の改善やリハビリ計画に反映できます。

さらに、3Dモーションキャプチャと併用して姿勢の変化と注視点を統合解析することで、転倒リスクを予測する行動モデルの構築にも役立てられています。

アイトラッカーで解決できる福祉施設の課題

介護スタッフの教育と負担軽減

深刻な人手不足が続く福祉施設において、新人スタッフの早期育成は重要です。熟練スタッフの視線を記録し、「介助の際にどこを見てリスクを予見しているか」を可視化することで、効率的なトレーニングが可能になります。

移乗介助や歩行介助の際、熟練者が無意識に行っている危険予知を具体的な注視点として共有することで、現場全体の安全性向上と教育コストの削減を同時に叶えます。

視線入力によるコミュニケーションを可能に

身体的な麻痺や病気によって発話や手足の動きが制限されている方にとって、意思伝達の困難は大きな心理的ストレスとなります。アイトラッキングを活用した視線入力システムを導入すれば、視線のみで文字入力や意思表示が可能になります。これにより、家族とのコミュニケーションや社会との繋がりを維持し、QOL(生活の質)を飛躍的に向上させることができます。

認知機能の把握

適切なケアプランの作成には認知機能の把握が不可欠ですが、従来の筆記や対面での検査は受診者に大きな負担をかける場合がありました。

これに対し、視線の動きを追うだけの認知機能検査法の開発が進んでいます。受診者の身体的・精神的負担を抑えながら、日常的なモニタリングの中で認知機能の変化を早期に捉えることが可能になります。

医療・福祉のアイトラッカーの選び方

実務を妨げない操作性とサポート体制

医療現場や福祉施設という多忙な現場に導入する場合、診察や介助作業の妨げにならない、装着感の少ないアイトラッカーを選ぶことは重要です。検討の際、デモンストレーションを実施しているメーカーを選ぶことで、実際の現場環境に即した使用ができるか、患者の使い心地などを確認することができます。

また、特殊な疾患や研究目的に合わせた細かい調整、カスタム対応が可能な技術サポートがあるか、といった点も安定した運用に欠かせないポイントです。

まとめ

精度の高いデータ活用で、現場に真の価値を

医療・福祉分野の導入において最も重視すべきは、収集データの信頼性と解析の即時性です。データの精度が不足していれば、誤った診断や不適切なケアプランに繋がる恐れがあるためです。

「どのような知見を得て、どう実務を改善したいのか」という目的に合わせ、最適なスペックと解析機能を備えた製品を選ぶ必要があります。まずは専門メーカーに相談し、ニーズに合致したソリューションを見極めることから始めましょう。

用途別アイトラッカーの
活用方法について
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【目的別】アイトラッカーおすすめ3選

ここでは、アイトラッカーの導入を検討している方向けに技術者による導入サポートとデモの開催や対応をしているアイトラッカーを目的別にご紹介しています。目的と用途に合わせて装置をピックアップしていますので、ぜひ製品選びの参考にしてください。

運転時や現場点検の
視線行動を計測したい

3選のイメージ1-2
  • 熟練技術者の視野を技能伝承に活かしたい
  • 屋内・屋外での自由な動きを計測したい
  • 難しい設定をしないで自社に合うものを導入したい
おすすめのアイトラッカー
自由に動きながら計測できる
装着型アイトラッカー
EMR-10
EMR-10
引用元:ナックイメージテクノロジー公式HP(https://www.eyemark.jp/reason/)
  • 使いやすさに特化した設計。タブレットPCですぐに接続・利用が可能
  • 自社の目的に合わせてカスタマイズや特注対応が可能
主な用途
技能伝承
運転
スポーツ
人間工学
心理学
       
レンタル可否
※1週間単位

特徴や導入事例を
詳しくチェック

対象物1点の細かい
視線を追跡したい
3選のイメージ2-2
  • 心理学など、学術的な研究に使用したい
  • 高い精度の視線計測を求めている
  • 今使っている生体計測と組み合わせたい
おすすめのアイトラッカー
人をより深く知るための
ハイスペックアイトラッカー
Tobii Pro スペクトラム
Tobii Pro スペクトラム
引用元:tobii公式HP(https://www.tobii.com/ja/products)
  • 最大1200Hzのサンプリングレートで高速な眼球運動のメカニズムも研究可能
  • アイトラッキング世界シェア No.1
主な用途
学術研究
マイクロサッカード
人間工学
心理学
       
レンタル可否
要問合せ

特徴や導入事例を
詳しくチェック

VRで再現された空間の
評価をしたい
3選のイメージ3-2
  • VR空間内での没入感を高めたい
  • ユーザーの注視点だけでなく感情も可視化したい
  • 商品企画の立ち上げから相談したい
おすすめのアイトラッカー
VR世界の脳活動を計測する
HMD型アイトラッカー
NeU-VR
NeU-VR
引用元:FoVE公式HP(https://fove-inc.com/product/)
  • ヘッドマウントディスプレイVR視聴中の脳活動・心拍および視線情報をリアルタイム計測
  • 立ち上げ段階から企画・開発を支援
主な用途
マーケティング
VR
空間評価
       
レンタル可否
※月単位

特徴や導入事例を
詳しくチェック

※2023年8月1日調査 googleで「アイトラッカー」で検索して表示された、アイトラッカー取り扱い企業の上位17社の中から、技術者による導入サポートとデモの開催または対応を行っている企業をピックアップし、以下の特徴で選出。
現場の複数箇所の視点を計測したい…唯一、導入企業の現場に合わせたカスタマイズ性と持つ装着型アイトラッカーを提供
対象物1点の細かい視線を追跡したい…唯一、視線データの取得量が一番高く(1200Hz)、マイクロサッカードを含む無意識な眼球運動を計測できる据え置き型アイトラッカーを提供
VRで再現された空間の評価をしたい…唯一、空間体験をしながら計測が可能なヘッドマウント型ディスプレイの装着型アイトラッカーを提供